悪いことをしたり、何かを間違えたりしたとき、どうしますか？もちろん謝りますよね。
もし、謝られたらどうしますか？許す？許さない？
あなたの周りにいませんか？
「謝るだけの人」
仕事でトラブルを起こして「すみませ〜ん」って一言だけで、数分後には悪びれる様子もなく、ケロッとしている人。
また、ニュースで出てくる謝罪会見なんかもそうですよね。
かしこまってはいますが、形だけの謝罪です。
そんな人たちに読ませてやりたいのが東野圭吾原作のこの作品『手紙』です。
あらすじ
この作品の主人公は２人出てきます。２人は兄弟で、若くして両親を亡くしています。
兄は必死で働いて、弟を大学に行かせようとします。
兄はある日、魔が差して空き巣に入り、お金を盗もうとするも、家主のおばあさんに見つかってしまい、思わず殺してしまいます。
強盗殺人犯として刑務所に入った兄。
犯罪者の家族というレッテルを貼られた弟。何をしようとしても、犯罪者の家族のせいで差別を受けてしまう。
そうとも知らず、兄は毎月手紙を送ってくる…。
加害者の家族である弟がすごく苦労する
２人の兄弟が主人公ではありますが、主に弟の人生のお話です。
最近でも加害者の家族について問題が出てるじゃないですか。何か大事件があると、ネットで犯人の実家が特定されて、その家が落書きされたり、物を投げつけたりといった嫌がらせをされるようなことが。
この作品の弟は１８歳という若さでたった１人で背負いこむことになります。
- まず、大学は諦めることになります。
- 生活費を稼ぐためのアルバイトも実質、クビに…。
- 友人と始めたバンドでプロデビューすることになりましたが、経歴を理由に無かったことに…。
- 好きな人と付き合うことができたが、相手の親に経歴がバレてしまい、お金を渡され「諦めてくれ」と頼まれる。
- 大きい会社に就職が決まるも、また経歴がバレてしまう。
- 結婚して子供が生まれると、今度は子供が差別の対象に…。
と、散々です。
そんな苦労も知らずに、兄は呑気に手紙を送ってくるんです。
「お元気ですか？僕は刑務所でこんなことしてます」
しらねぇよ！こっちはまた諦めなきゃいけないことができたわ！って感じです。
手紙でしか登場しない兄
兄は手紙でしか登場しないんですが、弟の苦労を通して兄も成長するんです。
結局６年、呑気に手紙を送り続けた兄ですが、弟からの絶縁を言い渡す最後の手紙を受け取って、初めて６年間の弟の苦労を知リマス。そして同時に、自分の犯した罪の重さを知ることになります。
この兄は、弟だけでなく、被害者の家族にも手紙を送り続けていました。
毎月毎月、謝罪の手紙です。
被害者の家族は６年間全て無視していました。
弟からの最後の手紙によって、被害者の家族にとんでもないことをしたと言うことに気付かされます。
私は手紙など書くべきでは
なかったのです。同時に気づきました。
緒方さんへの手紙も、おそらく
緒方さんにとっては、犯人の
自己満足にしか見えない不快
極まりないものだったに
違いないと。
被害者の家族への最後の手紙です。
そして最後のシーン。弟が慰問コンサートのため刑務所へ行くことになるんですが、ステージに立って見下ろすと、奥の方に手を合わせてうなだれている兄の姿が…。
このシーンは是非、小説だけじゃなく映画でも観て欲しい。
名言だらけ
この作品はいいな。と思うセリフがいっぱい出てきます。
差別されたと思うか？だがそれが社会だ。
君がいま受けている苦難もひっくるめて、君の兄さんが犯した罪の刑なんだ
大企業の社長に言われる言葉です。
どこを切り取ってもいいセリフです。
あの手紙があったからこそ、
今の自分がある。手紙が届かなければ苦しむ
こともなかっただろうが、
道を模索することもなかった。
弟が兄の最後の手紙を読んで思ったことです。
さいごに
冒頭に書いた、謝罪についてですが、私は適当に頭を下げて飄々としている人たちに言葉にできないモヤモヤを抱いていました。
でも、この作品を小説で読んで、映画で観て、モヤモヤがなんなのかはっきりしました。
兄の被害者の家族への最後の手紙です。
謝罪っていう行為は自己満足でしかない。
罪を背負って生きて行くことがどういうことなのか…。
仕事上のトラブルや謝罪会見ごときでここまで考えるのは重すぎますけど、でも軽すぎる人にはこれぐらい考えてもらってもいいと思います。